世界中のグルメが憧れる、神戸ビーフ。しかし、そのすべてが神戸で育てられた牛というわけではありません。「神戸ビーフ」と名乗れるのは、厳格な基準をクリアしたごく一部の牛だけ。その選ばれし肉が、なぜ唯一無二とされるのか。神戸ビーフとして認定されるための詳細な条件や、品質等級・霜降り(BMS)などの基準をわかりやすく解説します。
神戸ビーフの原点、「但馬牛」という存在
神戸ビーフのルーツは、兵庫県で守られ続ける在来種「但馬牛」。他県との交配を一切行わず、何世代にもわたって純血を貫いてきたその血統こそ、神戸ビーフの土台です。この純血種の但馬牛が、兵庫県内の指定生産者のもとで繁殖・肥育され、やがて肉牛として出荷されます。
厳選のカギは「厳しい認定基準」にあり
神戸ビーフの認定には、以下の3つの主な基準が設けられています。
01歩留(ぶどまり)等級:「A」または「B」の4等級以上
これは、一頭の牛からどれくらいの割合で食べられるお肉がとれるかを示すものです。お肉が標準よりもたっぷり取れる牛を「A」、標準のものを「B」、標準より劣るものを「C」と評価します。
02肉質等級:4等級以上+霜降りの度合いを示すBMS値がNo.6以上
肉質等級は、お肉の「おいしさ(品質)」を総合的に評価する基準です。霜降りの入り具合(サシ)、肉の色、肉のきめ細かさ、そして脂の質などが細かくチェックされます。そして特に重要なのが「BMS値」です。これは「ビーフ・マーブリング・スタンダード」の略で、お肉の中にきめ細かく入っている霜降り(サシ)の度合いを示します。No.1からNo.12まであり、数字が大きいほど美しい霜降りが入っていることになります。「神戸ビーフ」には、No.6以上という霜降りが求められます。この美しい霜降りこそが、神戸ビーフの「とろけるような口どけ」を生み出す秘密なんです。

03枝肉(えだにく)重量:
- 雌牛:270kg~499.9kg
- 去勢牛:300kg~499.9kg
お肉の美味さを保つために、適切な重さの牛が選ばれます。これは、斉一性を保つため、世界に類を見ない非常に重要な数値基準です。
これらの基準をすべて満たした牛肉だけが、「神戸ビーフ」の称号を与えられます。数値で裏づけられたその品質は、味覚の世界で確かな信頼を築いています。とろける霜降り、芳醇な香り、力強い旨味──それらは職人たちの技と情熱によって、完璧に仕立てられているのです。

本物の証が語る、透明性と信頼
神戸ビーフの価値は、味わいだけではありません。その品質と真贋性は、いくつもの制度によって徹底的に管理されています。
神戸肉流通推進協議会(Kobe Beef Marketing & Distribution Promotion Association)
「神戸ビーフ」と名乗るには、神戸肉流通推進協議会が定める認定を受ける必要があります。この協議会が、生産・流通・販売のすべてにおいて、定義に沿ったかを厳しく審査します。
個体識別番号と但馬牛血統証明システム
レストランやお店に表示されている10桁の個体識別番号を入力すると、その神戸ビーフが「どこで生まれ育ったのか」「本当に神戸ビーフとして認定されたものなのか」といった詳しい情報をインターネットで調べることができます。
科学で守る、DNA鑑定検査システム
加えて、神戸ビーフに認定された牛肉はDNA鑑定用にサンプル保存されています。真の神戸ビーフであるかは、そのDNAデータにより真贋の証明が可能。ここまで透明性と安全性が確保されている食材は、世界でも類を見ません。
神戸ビーフ、それは“基準”が証明する確かな価値
神戸ビーフが唯一無二とされる理由は、その美味しさが感覚だけで語られるものではなく、明確な基準と数値によって裏づけられているからです。但馬牛という血統の選定、歩留や肉質等級、BMS、重量管理まで――すべてが緻密に定義され、妥協なく運用されています。これらを満たした牛肉だけが「神戸ビーフ」と名乗ることを許される。つまり、神戸ビーフとは“味のブランド”であると同時に、“厳しい基準で裏づけられた品質のブランド”でもあるのです。あなたがその一皿と出会ったときは、目の前の肉に込められた厳格な基準と、見えない努力にも想いを巡らせてみてください。
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